
取り調べ中に、白人警察官が黒人男性を取り押さえ、
頸部を膝で圧迫したことから死亡した事件を巡り、
全米をはじめ、世界中に人種差別撤廃を訴える
Black Lives Matter運動が広がっています。
今回は、このムーブメントのきっかけとなった
ジョージ・フロイド事件について、
詳しくまとめてみました。
Contents
ジョージ・フロイド事件とは
全米にBlack Lives Matter運動を
巻き起こすきっかけとなったアフリカン・アメリカン(黒人)の
ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが
白人警官により押さえつけられ死亡した事件。
詳細を見てみましょう。
Black Lives Matter運動についてはこちら
ブレオナ・テイラー事件についてはこちら
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逮捕容疑は偽札の使用
2020年5月25日、メモリアルデーの夜、
すべての始まりは偽の20ドル札でした。
ミネソタ州、ミネアポリス近郊にある
Cup Foodsという食料品店で、タバコを1パック買うために
ジョージ・フロイドさんが
使用した20ドル札が偽札だったと
店の従業員が警察に通報をしたのです。
メモリアルデーについてはこちら
偽札だと知らずに使った可能性も
この店のオーナー、マイク(Mike Abumayyaleh)さんによると
ジョージさんはこの店の常連で、いつも感じがよく
これまでもトラブルを起こしたことはなかったそうです。
マイクさんはあいにくこの日は非番で、
この店の十代の従業員が手順に従って通報を行いました。
Abumayyaleh remembered Floyd as someone who was always pleasant. He said Floyd “may not have even known that the bill was counterfeit.”
Owner of Minneapolis grocery store says he told employee ‘call the police on the police’ as she witnessed George Floyd death
マイクさんはNBCのインタビューで、
フロイド氏はいつも感じがいい人だったと記憶していると語り、
「ジョージさんはそれが偽札だということを
知らずに使ったのかもしれない」と述べています。
通報により警察が到着
20:01の通報から7分後の20:08に警察が到着。
ジョージさんは角に駐車した車の中に、
他の男女2名と計3名でいました。
警察官のひとり、トーマス・レーン(Thomas Lane)が
銃を引き抜き、ジョージさんに車から降りるよう命じました。
なぜこの時点で銃を構える必要があったのかは
明らかになっていません。
トーマス・レーンによると、手錠をかけようとすると、
ジョージさんは抵抗、パトカーに乗せる際も
抵抗は続いたと証言しています。
頸部を膝で押さえつける
20:14頃、ジョージさんは閉所恐怖症により地面に倒れ、
そこにデレク・ショーヴィン(Derek Chauvin)が到着。
彼と他の警察官とでジョージさんを
パトカーに乗せようと試みます。
20:19、デレク・ショーヴィンはジョージさんを
歩道側に引っ張り、手錠ははめたまま地面に引き倒しました。
デレク・ショーヴィン元警察官についてはこちら
他3名の警察官も逮捕
SNSで拡散された動画により、当初は
ジョージさんの頸部を膝で押さえつけ
死に追いやったデレク・ショーヴィンのみが逮捕、
他3名の警察官は解雇されていました。
その後、他の角度から撮影された動画が公開されると、
そこにはなんと、首を押さえつけている
デレク・ショーヴィン容疑者だけでなく、
他3名の警察官もがジョージさんの身体を
押さえつけているのが映し出されていたのです。
これにより、他3名の警察官、
アレクサンダー・クェン(J. Alexander Kueng)
トーマス・レーン(Thomas Lane)
トウ・タオ(Tou Thao)
も殺人の幇助と教唆の容疑で起訴されています。
ジョージ・フロイド事件に関与した元警察官4名についてはこちら
参考記事:
BBC: https://www.bbc.com/news/world-us-canada-52861726
CNN: https://edition.cnn.com/2020/06/05/us/minneapolis-officers-background-george-floyd-trnd/index.html
ジョージさんの前科
ジョージさんには、窃盗や薬物所持でたびたび逮捕され、
2009年に懲役5年の判決を受け収監された前科があります。
いくつかの日本のブログで、
「前科があるのだから殺されて当然」といったご意見を見かけました。
人によって、さまざまなご意見があるのは否定しませんが、
これはわたし自身の意見です。
たった一度の失敗や過ちで、その人格や家族、
人生そのものを否定されてしまいがちな日本の風潮とは異なり、
アメリカでは罪を償えば、人生をやり直すチャンスが
人種を問わず等しく与えられています。
たとえ前科があるからといって、
警察官に不当な扱いを受けることを正当化できる
理由にはならないと考えています。
「警察が殺そうとしている!」
前述の通報した店の従業員が
オーナーであるマイクさんのところに
泣きながら電話をかけてきたといいます。
「どうしよう!その人、息ができないって言ってるの!
警察が彼を殺そうとしている!」
マイクさんは「警察に通報して、
そのときちゃんと録音されていることを確認して」
と従業員に指示したそうです。
Black Lives Matter運動が全米に広がる
この事件をきっかけに、人種差別撤廃を訴える
Black Lives Matter運動が全米に広がりました。
instagramでは”Black out Tuesday”として
画面を真っ黒にして抗議するアーティストや企業も
多く見られました。
当初は暴力的な抗議も見られましたが、
人種を超えて、話し合い、手を取り合い、
差別や優遇について、考える時間として
全米だけでなく、世界に広がりつつあります。
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「スター・ウォーズ」シリーズのジョン・ボイエガも抗議
「スター・ウォーズ」シリーズのフィン役として知られる
イギリス人俳優ジョン・ボイエガ(John Boyega)さんが
現地時間6月3日イギリス、ロンドンのデモに参加し、
涙ながらに「キャリアがどうなったって構わない!」と
人種差別撤廃を訴えています。
LUCASFILM STANDS WITH JOHN BOYEGA
We stand with and support you, @JohnBoyega. View his full speech: https://t.co/Goxb5y2wrK pic.twitter.com/ZvE0t5tRPY
— Star Wars (@starwars) June 3, 2020
それに対し、「スター・ウォーズ」のルーカスフィルムは
ジョン・ボイエガを支持すると表明しています。
JOHN BOYEGA, YOU ARE OUR HERO.
「ジョン・ボイエガ、君は私たちのヒーローだ。」
ジェニファー・ロペスも抗議の署名
ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)さんと彼女のパートナー、
元MLBプレイヤーのA-Rodことアレックス・ロドリゲス(Alexander Rodriguez)が
抗議のための署名に出向いた様子を
インスタグラムにポストしています。
「ジョージ・フロイドを忘れない」
現地時間6月4日には、ジョージ・フロイドさんの
追悼式が行われました。
この様子は全米に広く中継され、
多くの人が彼の死を悼みました。
長年、見て見ぬふりをされてきたこの問題に
一石を投じたジョージさんの死。
これをきっかけに、私たち一人ひとりが
「差別」について考え、
感じ、語り合う機会となればいいとわたしは考えます。
決して、アメリカだけの問題ではありません。
アメリカをはじめとする世界に蔓延る人種差別について、知ること。
そして、人種に関わらずとも自分の中にもある「差別」。
一人でも多くのひとにとって、
向き合うきっかけになりますように。